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諸般の事情により、皆様へのご報告が大変遅くなりましたことをお詫び申し上げます。「支援する会」事務局・佐藤は、2008年9月にネパールを訪問した際、バクティさん(及びそのパートナー)と直接お会いする機会を得、その後の経過についてお話をうかがいました。以下、その内容を簡単にお伝えします。
<裁判のその後>
彼女のケースは「軍事法廷」内における二審を既に終了したとのことです。残念ながら彼女の主張は認められず、復職はなお実現していません。バクティさん本人の説明によれば、判決は彼女を駐屯地内で拘禁したことに正当な理由がなかったことを認めたものの、解雇自体を不当とはしなかったとのことです。この不本意な判決を受けて、10月には最高裁に訴えるとのことでした(実際に訴状を提出した由、その後のメールで知らせを受けとりました)。BDSのバックアップを受けながら闘いぬく彼女の意志は、強固であると見えます。
<個人的状況>
彼女は現在、引き続きBDSのスタッフとして働いており、現在は月6000Rsの給料を得て、パートナーとともに暮らされています。ほぼ一年前にお会いしたときとは異なり、小さいながら独立の一部屋をカトマンズに借りて、パートナーと一緒に生活できるようになったことは、彼女にとって一定の状況改善ともいえるでしょう。もっとも、生活必需品の(日本の比ではない)急激な高騰に襲われているカトマンズでの暮らしは、彼女たちだけに限ったことではもちろんないのですが、経済的にも極めて厳しいものであるようです(私が訪問したとき、煮炊き用プロパンガスを既に使い終わってしまったのに、次のガス(1200〜1400ルピー程度)すら手にいれられていない状況でした…)。
パートナーのパルヴァティさん(仮名)に現在仕事はなく、また高失業率のなか仕事を見つけられる見込みも、ほとんどありません。加えて、除隊に至る数々の仕打ちはパルヴァティさんに大きな精神的傷跡を残し、今なおショック症状に襲われることもしばしばあるといいます。
<寄付金の使途について>
先に日本から送金していた、皆様からの寄付金は、彼女(たち)が自律した生活をスタートするための資金として、最低限必要な家財道具(鍋釜、ガス台、プロパンバスボンベ、ベッド等)をそろえるために使われました。せいぜい5畳ほどの小さな部屋におかれたそれらを指して、もし日本の人達からの支援がなかったらこれすら手に入れられず、自律することはおぼつかなかっただろうと、バクティさん。今回、面会当時口座に残っていた寄付金のほぼ全額にあたる10,000ルピー(約17,000円)も、手渡しました。
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2007年12月21日、ネパールの性的マイノリティにとって「歴史的」というべき決定を、最高裁が出しました。「すべてのLGBTIは自然な人々(natural persons)であるので、彼らはネパール社会において(憲法が保証するところの)すべての自由を享受することを許されるべきである」(22日付The Kathmandu Postの記事における引用による)とし、そのための法整備を政府に命じています。また、同性間の婚姻に関する調査を行い法的措置のための政府への助言を行う委員会の結成も命じています。
この判決は、「ゲイ、トランスセクシャルは『ふつうの』人々と最高裁:性的マイノリティがアイデンティティを勝ちとる」(The Kathmandu Post)、「最高裁がゲイとレズビアンのために一撃」(The Himalayan)といった見出しのもと、新聞各紙にも大きくとりあげられています。
今回の命令は、2006年4月に、性的マイノリティの権利確認等を求めて4つの団体が共同で訴えを起こしていたのに応じて出されたものです。4団体のうちの一つBlue Diamond Sccietyの代表Sunil Pant氏は、これを「ネパールのLGBTIにとって偉大な勝利」と表現しました(コメントの全文は、BDSウェブサイト上で読むことができます。http://www.bds.org.np/historicalnews.htm
判決後の皆の喜びの表情などを収めた写真も見られます。http://www.bds.org.np/gallery.php)この判決がバクティさんのケースを解決する推進力ともなることを願ってやみません!
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2007年8/07付新聞The Kathmandu Postより
http://www.kantipuronline.com/kolnews.php?&nid=118305
バクティさんらが軍駐屯地内で拘束され、解雇されたことを報じた第一報です。日本語訳を参照してください。
<日本語訳>
カトマンズ、8月7日- 一ヶ月を越す勾留の後、ネパール国軍はレズビアンのかどで、その二人の女性スタッフを解雇した。[中略]カトマンズ・ポスト紙に対し、Rohini(=バクティさん)は、彼女達に対する告発が根拠のないものであると語った。
「彼ら(=国軍)は、私とShama(=パルヴァティさん)が私のベッドに一度一緒にいたといって、私たちが性的関係を持ったと非難している」、しかし彼女の主張では、彼女達はただ一緒に本を読んでいただけなのである。彼女の性的指向について尋ねると、Rohiniは「行動においてはより男性に近い」と述べた。Rohiniは自分が解雇通知書すら受けとっておらず、「彼ら(=軍当局)はそれを私の前で読み上げただけ。それは、背徳的な行動のかどで私を告発するものだった」という。
軍のスポークスマンは、二人が規律に関わる深刻な罪により、軍簡易裁判所を通じて解雇されたと伝えた。彼らがレズビアンであるかどで解雇されたのかという質問に対し、スポークスマンはコメントを拒否した。RohiniとShamaが性的関係を持ったかどうかを判断するのは難しい。しかし論点はそこにはないと、弁護士らはいう。
弁護士で「女性、法、開発のためのフォーラム」議長であるSapanaMalla Pradhanは、ネパールの憲法が性や性的指向に基づいて差別しないことを保証していると主張する。「性的指向による解雇は国際法に反する」と彼女はいう。ネパールは、性に基づく差別を明確に禁じた国際自由権規約の参加国でもある。[中略]
保守的な軍隊が、性的指向をめぐる近代的言説に対峙することになったようだ。このケースをめぐる社会的言説が −あるいは法廷における言説も含め− どのように展開していくかは、性的マイノリティに対する我々の社会の寛容さを試すものとなろう。
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<これまでの直接募金活動>
2007年10月7〜8日、働く女性の全国センター (ACW2)主催の「働く女性の教育ワークショップ」にて、第一回のチラシ配布/直接募金呼びかけ活動を行い、暖かい励ましのメッセージとともに合計10,200円の募金をいただきました。応援、ありがとうございました!2007年10月13日、salon de debut主催のお話会「描かれた女?男?:近世初期風俗画のジェンダー・イメージ」(於LOUD、東京・中野)にて、第二回のチラシ配布/直接募金活動を行い、暖かい励ましとともに合計8,685円の募金をいただました。どうもありがとうございました!
2007年10月14日(日) クイア学会設立プレイベント「クイアって何?−学会立ち上げリレートーク」(於パフ・スペース、東京・早稲田)において、チラシ配布/直接募金呼びかけ活動を行い、暖かい励ましと合計11,115円の募金をいただきました。どうもありがとうございました!